安全関係記事

 「株式会社キョウリツ:PSDI導入とプレスの安全教育」
PSDI導入とプレスの安全教育で安全を確保

(株)キョウリツ代表取締役 上原昭郎


 
(株)キョウリツは、昭和25年に栃木県鹿沼市に工場を構え。以来55年にわたって金属プレスによる抜き、孔明、曲げ、絞り加工による靴用バックル・ヒールパイプ等の製造や自動車川・金属プレス部品等を手掛けてきた。こうした加工・製造は中国企業に移りつつあるが、同社では金型の成型技術をはじめ高い技術力で、高付加仙値な製品の製造に取り組み、評価を得ている中小企業である。今同は、同社代表収締役・上原昭郎氏にプレス作業の安企対策について話を伺った。

●従業員の方は何名ですか。
 35名です。男性が24名。女性が11名でそのうち7名がパート従業員です。プレス作業は女性も行っています。

■長年プレスの加工に携わっていますが、安全に対するお考えを教えてください。
 昔はこの業界・で多くの人がプレスでケガをしていました。先代が起業した終戦直後はただモノをつくればいいという時代です。その頃は不安令プレスしかなかった、というと大げさですが、安全装置の付いたプレスは売られていませんでした。ご存知だとは思いますがケガをしなければ一人前じゃない」と言われていた時代です。それが昭和40~50年にかけて労働安全衛生規則の改正、プレスの構造規格などの改正が寄与して、かなり安全面は改善されたと思います。当時ははピンクラッチ式プレスを使っていましたが、現在はより安全なフリクションクラッチプレスを使っています。
 製品はより付加価値の高いもの、より良いものに進化します。数十年前から私たちの考えも変化し。従業員にケガを絶対させてはならないという号えで取り組んでいます。実際に災害が起こると本人だけでなく会社や家族も大変な状況に陥ります。
 安全の確保には、うるさいと思われるくらいしつこく、安余の大切さを訴えるしかないと思っています。不安令行動があれば、その場で叱りますから私は。


■機械の安全化をどのように進めていますか。
 不安全行動を叱るだけではなく、時代に合わせて設備面でも先取りして安全な機械を入れることも重要だと思います。昔はケガを本人の不注意のせいにすることもありましたが、今はそうではなく、人問は問違いを犯すものという前提で、できる限り機械の安全化を図るようにしています。ただ現状では100%の本質安全化は難しいですね。
 
■機械の安全化には投資も必要ですが。
 当社では平成14年にPSDI (制御哉能付き光線式安全装置)を導入しました。金型内 に材料を入れた手を安全な領域に戻せばスライドが起動します。もちろんスライド下降中 に光線を遮断するとスりでドが急停止する仕組みです。両手押しボタンを抑す動作を省略 できるため、生産効率が2割程度アップしていると思います。すべてのプレスに付けているわけではありませんが、今後も増やす予定です。
 
●PSDI導入のきっかけはなんですか。
 PSDIに閨しては、前々からプレス雑誌で知っていました。10年以に前からヨーロッ パではPSDIが使われていて、安全かつ効率的で使い勝手が良さそうだと思っていました。 その時はまだ、PSDIの安全基準が定められていなかったのですが、4年くらい前に鹿沼 労働基準監粁署の安全に関する講演会に行った際、すでにプレスの安全装置の構造規格を 満たすPSDIがあるので使ってみてはどうかと薦められたのがきっかけです。  当社では従来から使っていた光線式安全装置に加えてPSDIを設置し、二重の安全対策 を施しました(写真1、2)。

 
■まだPSDIを設置していないプレスも残つていますか。
 ええ、まだ残っています。プレス作業によってはスライドの加工後に金型内に残った製 品を収り出す作業が必要になりますが。そうした作業にはPSDIは向いていないと思いま す。一種類の安全装置ですべてのプレス作業に対応するのは難しいですね。

■プレスプレス機械作業主任者の資格を持つ人は何名いますか。
 11名です(図1)。実際にプレス作業を行うのは15名です。

■従業員の約1/3が資格を取得していますね。
 安全やプレスの構造など勉強になりますから、プレスの経験が5年以上ある人は資格収 得を勧めています。5年に満たない若い人もプレスに関する基本的な知識の習得のために、 プレスの特別教育を受けてもらって、金型の取付けや調整など作業主任者のもとで作業し ています。

 
■日常点検や特定自主検査など、点検・整備はどのように行つていますか。
 日常点検は、点検項目のチェック表を機械に貼り、毎日作業主任者の資格者が行ってい ます(図2、写真3)。日常点検のマンネリ化を防ぐために、時々私か抜き打ち的に「この 項目は今日どうだった?」と聞くことにしています。
 特定自主検査では、やはり古いプレスの指摘が多いですね。例えばクラッチ板が減って いるとか、オイル洩れがあるとか。プレスは振勣がありますから、ネジが緩んだり、部品の摩耗もあります。また最近は電気系統の故障などもあります。作業主任者レベルではわ からない故障・調整個所も特定自主検査で判明するので、年1回の検査は欠かせません。
 
■プレスの安全確保に重要なことは何でしょうか。
 中小企業は大変ですよ(笑)。ロットの多いものは中国に持って行かれるから、良い品 物をつくるのは当たり前で、私たちは小回りを利かせたり、いろいろな面でスピードが求 められています。新しい金型機械やマニシングセンターなどの設備投資も必要かな、と思 っていますし、最近出てきたサーボプレスにも興味を持っています。
 安全もまず、プレスなどの機械設備面の安全化を進めること。そして、作業手順など安 全のルールをつくって後はその約束事を守ってもらうだけです。難しいことや格好いいこ とを言う必要はないんです。「ルールを守れば、ケガはしないよ」と、絶えず同じことをくり返し、言うのが重要なことではないでlしょうか。


 
安全と健康
「株式会社キョウリツ:PSDI導入とプレスの安全教育」